価格は情報ではなく、情感で決まる?
商品やサービスは、さまざまなファクターが複雑にからみあってできていきます。
そのひとつが価格です。
価格は、たいてい 以下の4つの要素で決まります。
1/製品をつくるのにかかった全コストにマージンをのせる。
2/競合製品の価格を分析・参考にし、決める。
3特定の層をターゲットに定め、所得等を踏まえて決めた価格で製品をつくる。
4/アルゴリズムをもとに、複雑なリアルタイム計算で、需要と供給を推測する。
でも、実は5番目の価格戦略があって、これが、とても面白いんです。
それが「物語の消費対価」です。物語という付加価値に、人は想像以上の価格をつけるというのです。
人は、とっくの昔に、単なる「モノの消費」に飽きています。言い換えれば、市場、製品の飽和です。
でも、見方を変えれば、誰もが、自分の人生に豊かな意義を与えてくれるものを欲しています。その深い欲求を製品の物語によって満たすのです。
言い換えれば、「モノのコト化」ですね。これも、ずいぶん昔から言われてきました。
モノのベネフィットは、もう差異化できないレベルに達しているという話しを良く聞きます。確かにそう感じます。
どこがつくっても同じような機能、デザインだと。そこで、ベネフィットではなく、物語の登場です。
こんな実験をした人がいるそうです。
HBRに掲載されていましたが、有名な新聞のコラムニストが、機能などは酷似している製品なのに、違う価格になるのはなぜか、価格が決まる要因は何かと思案し、ある実験を試みたそうです。
まず、価値のない安物を適当にガレージセールやリサイクルショップで買う。
購入価格は1ドルから4ドル程度だったそうです。
古い木槌、ホテルの古いルームキー、プラスチックのバナナ。
どれも不用品以外の何物でもなく、本質的な価値はゼロに等しかったとか。
次にライターに頼んで、それぞれの品物をからませた、架空のヒューマンストーリーを創作してもらいました。
で、それらの品物を架空の物語と一緒にイーベイに出品・掲示(出品ページでは、詐欺とされたり誤解を与えないように、物語が創作であること、および作者の名前が明記されたそうです)します。
すると驚くべき結果が。
品物の価格は平均で2700%上昇したそうです。
1ドルもしなかったマヨネーズの容器のミニチュアが、51ドル。
ひびの入った陶器の馬の頭は、1ドル29セントだったものが46ドル。
これは、実は、よくわかる話しなんですよね。
1997年のブランドの数は世界で250万だったのに、現在では、1000万に近づいているらしいのです。
ということは、ほぼすべてのモノが急速に差異化・競争力を失いつつする状況にあります。
だからこそ、物語が欲しいのですね。
それがブランドです。
ある一定以上の企業がブランディングする(したがる)のは、ほぼすべて、この物語性を持ちたいためです。
ヴィトンに代表される超高額なブランドだけではなく、ユニクロも、もちろん今や世界に冠たるブランド(他とは明確に差異化できる物語としてのポジショニングとプロダクト)です。
ミネラルウォーターのヴォルビックのように、最近では、商品を購入すると、途上国に何らかの寄付が送られるというのもブランドを担う要素になっています。これも、立派な物語ですね。
モノは情報です。情報は、そのままでは単なる情報ですが、そこに情感を加えると、情報は物語となり、違った価値を見せます。
今は無名の会社や商品でも、独自の物語をまとえば、世界でひとつのブランドになる。
そんな可能性を持っています。